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【ネタバレあり】シベリア少女鉄道『ビギンズリターンズアンドライジングフォーエヴァー』感想

感想・レポ

感想(ネタバレあり)

第一幕

  • 浅見…銀次
  • 篠原…糸井
  • 小関…リポーター
  • 川井…雑誌記者
  • 風間…少年
  • 葉月…糸井の嫁
  • 加藤…警察官、トレーナー

まず始めに、【1時間近く伏線を張るだけ張って残りの1時間で回収しつくす】のがシベ少のお家芸なのだが、今回はネタバラしが早かった。野球選手という意味での「バットマン」という無茶苦茶な力業でストーリーを進めていく。コウモリのシルエットが楽天のロゴに変わるOP映像も最高。

2014年の銀次(楽天)と糸井(オリックス)の首位打者争いを演劇にする、イカれた設定。第一幕は横に座っていた女子大生が微塵も笑っていなかった。(女子大生が銀次を知ってるわけないんだから、そりゃそうだろ!!)
野球を知らない人はどう思いながら見ていたのかは分からないが、最初の方はおじさんの笑い声しか響いていなかった。

ただ第一幕の首位打者争いの中で徐々に見えてくる今作のテーマ【好感度】

舞台に映し出されるゲージを「打率」だと思わせる演出で笑いを取りつつ、第一幕の中で怪我のフリをした銀次が打っているのにゲージが下がったり、糸井が痛み止めを打っただけでゲージが上がったりと着々と伏線を張っていく。

最終的には現実と同じく糸井が首位打者に。銀次のコメントも実際にしていたものだった。(どこ忠実にしてんだよ!)

そして第一幕が終了し、セットの転換と同時に第一回の本読みの様子が映し出される。
浅見と篠原の小競り合い、風間に託された好感度、土屋の死
作・演出が亡くなっているのに舞台を続けている演者も頭がおかしいのだが、実際にはそういう台本を書いている土屋が一番ヤバい。

第二幕

  • 川井…こうた
  • 葉月…ちひろ(長女)
  • 浅見…ちひろの父
  • 篠原…こうたの父
  • 小関…次女
  • 風間…審判
  • 加藤…先生

第一幕と打って変わって第二幕は恋愛モノ。(変わりすぎ)

川井と葉月が主役の恋愛モノだが、好感度バトルが続いているため浅見と篠原が邪魔ばかりするため話が進まない。シベ少には珍しい「絶対音感があります」や「カップラーメンが好きです」、昔話など要素を詰め込んでくるなど大喜利チックな好感度上げ合戦が面白かった。毎度のことながら小関の振り回され役は大変だなと思う。

その中で篠原が「緊張すると笑ってしまう」と「ジョーカー」のパロディを取り入れる。「浄化」という強引なダジャレを持ち出す力業。私は「ジョーカー」を見ていないが何とか理解できた。そもそもバットマンシリーズを1作品も見ていないため、浅見の「腕に古傷がある」がパロディなのかどうかも分からなかった。
(知っている人がいたら教えてください)

いよいよ舞台から降りようとする浅見を引き留めるために、一家総出でジョーカーを倒そうとする謎展開。

加藤が縛られたところから篠原が優勢になる。出番の増加を篠原にそそのかされ好感度モンスターになる加藤。タイツ?を破って被っていたり、葉月の肩とか触ったりしていたから多分「変態仮面」のパロディだと思う。

そして加藤が車に跳ねられ舞台上で亡くなる。風間に抗議したことでレッドカード(サッカー要素)が出され退場。本当に舞台から降りて退場する。

その後の家族会議で「未成年のたばこ」「魚の食べ方」「字が汚い」などの【好感度のパンチライン】が続き、VARまで飛び出す始末。(前半が野球だからって、後半をサッカーにしなくてもいいだろ!)ここからよりカオスに。
(↑葉月さんの色っぽい演技が最高。土屋さんが言わせたかったんだろうな。ありがとうございます!!)

篠原の罠により浅見に土屋殺しの濡れ衣が着せられ好感度は失墜していく。篠原が浅見に暴言を吐いた後すぐに肯定的な意見に言い換える”ぺこぱ”のパロディと、浅見の関西弁を活かして風間に「感謝しかないですよ~」とすがりつく”吉本闇営業(宮迫)”のパロディと時事的な要素を挟んでくる。ぺこぱに関しては去年の年末あたりで注目され始めたのに、この短期間で舞台に入れてくるのは凄い。

好感度が失墜した浅見が取り返そうとするも、いい反応が返ってこない。必死にあがく中で急に菅田将暉の「まちがいさがし」が流れる。

まちがいさがしの間違いの方に
生まれてきたような気でいたけど
まちがいさがしの正解の方じゃ
きっと出会えなかったと思う
ふさわしく
笑いあえること
何故だろうか
涙がでること
君の目が貫いた
僕の胸を真っ直ぐ
その日から何もかも
変わり果てた気がした
風に飛ばされそうな
深い春の隅で
退屈なくらいに何気なく傍にいて

どことなくもがき苦しむ浅見とリンクする歌詞。それに共鳴し家族が助け合うと一転、乃木坂46の「シンクロニシティ」が流れる。

悲しい出来事があると
僕は一人で
夜の街をただひたすら歩くんだ
背中丸め俯いて
行く当てなんかないのに
雑踏のその中を彷徨う
キープゴーイング (ウォウ…)
キープゴーイング (ウォウ…)
すれ違う見ず知らずの人よ
事情は知らなくてもいいんだ
少しだけこの痛みを
感じてくれないか?
信号を待つ間に
ちょっとだけ時間をいいかい?
この気持ちが分かるはずだ
シンクロニシティ
きっと 誰だって
誰だってあるだろう
ふいに気づいたら泣いていること
理由なんて何も思い当たらずに
涙が溢れる
それは そばにいる
そばにいる誰かのせい
言葉を交わしていなくても
心が勝手に共鳴するんだ
愛を分け合って

この歌詞が

  • 浅見…通りすがりの人
  • 小関…妊婦
  • 葉月…見ず知らずの女性
  • 川井…車の運転手

でリンクしていく。しかし、振り付けの中で篠原が葉月に就活情報誌を手渡す。(白石麻衣が表紙)

これにより1分以内に川井と葉月が出会わなければならないのだが、残り約15秒で浅見が時を戻す。(この残り時間は初日と2日目では違っていたので本当に公演ごとに変わっている)

第一幕’

第二幕の設定を残したまま、もう一度第一幕を再演する。
すると、第一幕では普通だったセリフが第二幕を通したことで全て意味合いが変わっていく。鳥肌モノ。糸井の「緊張すると手が震える」というセリフがきっかけで、好感度が下がり、加藤の退場で辻褄が合わなくなったりと好感度が逆転していく。(今回は加藤さんの入退場ありきで最前列に出入り口が劇場を選んだのではないかと睨んでいる)

第二幕

再び好感度が逆転した第二幕に戻ってきた演者は舞台を無理やり終わらせることができた。

感想(総括)

今回の『ビギンズリターンズアンドライジングフォーエヴァー』は、社会全体が【好感度】について敏感になりすぎていることを強烈に風刺した、皮肉要素たっぷりの演劇だと感じた。

本編では好感度を気にしすぎるあまり醜く映ってしまっている現実や、一回の失敗で必要以上に叩かれる現代社会をそのまま映している。お笑い界でもてはやされている「誰も傷つけない笑い」をいじったり、浅見が必死に好感度を取り戻そうとする姿は吉本闇営業問題で叩かれた宮迫を彷彿とさせる悲しさがあった。

表に出なければ好感度は下がらない

確かにそうだが、それだけではない

好感度における当事者の苦悩や醜い考えが表れている非常にいいセリフだった。

面白さの中にメッセージが随所に散らば目られていて、尚且つコメディの中にスポーツ、SF、恋愛…など、ありとあらゆるジャンルが組み込まれている演劇そのものとしても非常に面白い作品になっている。

タイトル通り

演劇が始まり【ビギンズ】また戻り【リターンズ】そして【アンド】好感度を上げる戦い【ライジング】は終わることなく続く【フォーエヴァー

ただ一つ残念なのは、【確実に世に出せない】ということだけだろう。

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